ここでは中古マンションの値引き交渉をする前に知っておきたいことを7つのポイントに絞って説明します。価格交渉をする上で、成功の確率を上げるためには、事前情報と、その情報が何を意味するのかを知っておくことです。この記事では、価格交渉をする上で知っておくべきことを網羅してあります。
読者対象は、これから中古マンションを購入しようとしている方です。値引きの交渉ももちろんですが、目に見える価格だけでなく、見えない部分の気を付けるべきことに言及してしていますので、ぜひ参照ください。
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中古マンションの値引き交渉の相場は?
よく価格交渉がどれくらいできるものなのか、実際の営業の現場でも聞かれることが多いのですが、正直なところ「何割まで」とか「値引きの相場」といったものはありません。すべてが個別の条件や事情があり、「一概にこれくらいならいけそうです」という目安はありません。
しかし、物件ごとの売却理由や売主の方の状況などによって、「これくらいならイケるかも」と予測することは出来ることは出来ます。そこで、まずは値段交渉をする前に抑えておきたいポイントについて説明します。
中古マンションの値引きをする前に抑えておきたいポイント
価格交渉をする前に知っておかなければいけないポイントについて説明します。
まず価格交渉にあたり、その中古マンションの売主のことを知ることから始まります。売主は一般の個人なのか、不動産会社なのかによっても状況が変わってきます。
売主が一般の個人の場合
売主が一般の個人の場合は、その方の状況によって大きく変わってきます。
①金銭的または時間的にも余裕があり、売り急ぐ必要性が無い方
②金銭的または時間的にも余裕がなく、売り急ぐ必要がある方
①の金銭的・時間的に余裕がある方は、値段交渉は一般的に難しいと言えます。わざわざ値段を交渉して安く売るくらいなら、もっと高い値段で買ってくれる人が現れるのを待った方がいいという意識が働くからです。
②の金銭的・時間的に余裕がない方は、比較的値段の交渉はしやすいです。特に交渉がしやすいのは、時間的に余裕がない方や時間をかけたくない方。
例えば、相続税の支払い原資にしなければいけない、転勤が決まって遠くに引っ越してしまう、買い先行の住み替えであるケースなどがそれにあたります。多少安くてもさっさと現金化してしまいたい事情がある方は交渉はしやすいです。
逆に注意したいのは金銭的に余裕がない方です。支払いに余裕がなくなり任意売却などで売却を急ぐケースなどがそれにあたります。
ほとんどのケースで住宅ローンが残っており、この残債額を下回る金額ではそもそもお金を貸している債権者が、値段交渉自体に応じてくれないこともあります。このケースでは売主の意思に関係なく交渉が難しいケースもあるので注意が必要です。
売主が不動産会社の場合
個人が売主でなくリフォーム済み物件など、不動産会社が売主になる中古マンションも市場には数多く存在します。売主が不動産会社の場合は、個人が売主の場合と違い事情が少し異なってきます。
不動産会社の場合は売りきることが目的なので、売物件の状況によって変わります。売りだされてから時間が経っている物件や、不動産会社の決算期に近い時期だと交渉に応じてもらえる可能性が高くなります。
また多少の値段交渉はすでに想定して価格には織り込み済みという会社もあります。あくまで会社次第なので、事前に担当である仲介業者に確認しておくことをお勧めします。
【裏技的な交渉術】
ここで売主が不動産会社である場合で、交渉が出来そうかを調べる裏技的なやり方を紹介します。そのやり方とは不動産登記簿謄本を取得することです。法務局に行けば誰でも取得することが出来ます。
この登記簿謄本を見れば、その不動産会社がその物件をどのように取得しているかが分かります。会社によっては銀行からお金を借り入れて中古マンションを取得したりすることもあります。そして登記簿謄本には借り入れを使っているか、またいつ借り入れをしたかが記載されています。
ここからがミソなのですが、銀行は基本的にお金を貸してから1年たっても売れない物件は不良在庫としてみなします。不良在庫を持つということは今後の銀行取引に影響が出てくるということです。なので不動産会社としては、1年以内には絶対に売ってしまいたいわけです。
会社によっては利益が無くても売ってしまいたい事情が発生するわけです。こういった状況の物件であれば、値段交渉はもちろん、大きな金額の交渉が出来る可能性が高いということになります。
値引き交渉がしにくい物件
逆に値引き交渉がしにくい中古マンションはどのようなものがあるのでしょうか?例えば、物件そのものの希少価値が高いケースや、まだ売りに出されて間もない物件は比較的値段の交渉がしにくいといえます。
なぜなら希少価値が高い物件であれば、わざわざ値引きをしなくても購入者が現れやすいからです。私が経験したケースだと、同時に複数の購入希望が入り、結局は売り出し価格よりも高い金額で成約した例もあります。
また売りに出されて間もない物件も、まだ他に購入希望者が現れるかもしれないからという理由で、値段交渉に応じてくれない場合が多いです。他にも同じ理由で、価格変更で値下げされた直後の物件についても価格交渉はしにくいと言えます。
このように、中古マンションの値段交渉をする時には、まずは売主の状況や物件の状況を知ることから始まります。前置きが長くなりましたが、次からは実際に値段を交渉する上で知っておくべきポイントをお伝えします。
中古マンションの値段交渉をする前に知っておくべき7つのポイント
①とりあえず値段交渉は厳禁
値段交渉をする上で、必ず抑えておいて欲しいのがここです。値段交渉をして交渉がまとまれば、次は契約です。つまり値段交渉自体が契約意思の表示として考えてください。
その上で不動産仲介業者を通じて提出する書類が「買付申込書」と呼ばれるものです。この書類に希望価格や手付金の額、銀行ローンの有無や契約希望時期を書いて売主に提出します。
希望道りの内容でなかったとしても、双方が納得できる条件となれば次は契約になります。ちなみに、この時点で証拠金や手付金が発生することはなく、法的な縛りはありません。
しかし、買付申込書を提出することは条件がまとまれば契約することが前提で、値段交渉をするのであればその前提条件が必須条件であることを覚えておいてください。
②事前審査はあらかじめ通しておく
住宅ローンを利用するのであれば、事前審査はあらかじめ通しておくといいです。不動産会社や不動産仲介業者によっては事前審査が通っていないと、買付申込書そのものを受け付けない会社もあります。
住宅ローンの審査が通っていないのであれば、買えるか買えないか分からない人として見られます。当然買えるか買えないか分からない人の値段交渉には応じることもありませんし、もし他に欲しい人が現れてその人が事前審査に通っていれば、その人のものになってしまうことも往々にしてあり得ます。
特に人気物件の場合は、複数の引き合いが入ることも多く、価格交渉以前に物件が買えるか買えないかが争点になることもあります。先に述べた希少価値の高い物件=人気物件の価格交渉がしにくいということにも通じます。
本気で探しているのであればそういった事態にも備えてあらかじめ事前審査を通しておくことが重要なポイントになります。
③無茶な価格交渉は厳禁
中古マンションの取引で価格交渉は頻繁に行われていますが、だからと言って無茶な価格交渉は基本的にNGです。
価格交渉として適正な金額は、例えば1,980万円の端数をきって1,900万円で交渉する感覚です。無茶な価格交渉とは、例えば1,980万円を1,800万円とか1,700万円でという感覚です。
根拠のない無茶な価格交渉は、売主の心証を悪くするだけでなく、不動産仲介業者からの心証も悪くします。仲介業者が売主に忖度(すんたく)し、買付申込書を売主に出すことすらしないことも多々あります。
確かに上手く行けば、という気持ちもあるかもしれませんが、色々とリスクがあることも覚えておいてください。
④相場をしっかり押さえておく
値段交渉をする時に、ひとつの判断材料としてこれまでの同じマンション内の部屋や周辺の似たような中古マンションの売却相場などを知っておくことも非常に重要になります。客観的にみて相場価格で売り出されているものを交渉しても、そこまで大きな金額は期待できません。
相場を知ることは重要なのですが、なかなか消費者が知ることが難しいのも事実です。顧客のことをしっかり考えてくれる不動産業者であれば、正直にデータなどを用いて相場を教えてくれることもありますが、物件を預かっている業者などは売主からのプレッシャーもあり、いい加減な相場を教えられてしまうこともあるかもしれません。
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⑤リフォームの見積もりを取る
また効果的な方法として、値引き金額の根拠を示す方法があります。中古マンションでは、売主が住んでいて荷物を出しただけの状態で引き渡されることもあり、リフォームに費用がかかることも多くあります。
「大体これくらい」という目安で交渉することも出来ますが、実際に見積書があった方が説得力が出ます。ただ単にこれだけ引いてくれというよりは、こういった根拠があるからこれだけ引いてほしいと言ったほうが、交渉自体は上手くいきやすいです。
⑥インスペクションを利用する
他にもインスペクションと呼ばれる住宅検査を利用する方法もあります。2018年の4月から法制度化され、実施の確認をすることが必須となり、以前よりも認知度も上がってきています。
インスペクションをすることで、物件の目に見えない部分の欠陥が分かります。これにより、見えないことへの不安が解消され、中宅住宅流通に弾みがつくと国が法制度化へ舵を取りました。
インスペクションをして給排水管の交換の必要性などを指摘された場合は、その補修分を交渉するということが可能になります。ただし、インスペクションをして何も問題点が見つからなければ、交渉材料がなくなってしまう可能性もあるので、インスペクションについては値段交渉の材料というよりも、売買の安全性を確かめるためと考えた方が合理的かもしれません。
⑦本当に欲しいという気持ちを伝える
やはり最後は売主も人なので、本当に欲しいという気持ちを伝えることではないでしょうか。特に個人が売主の場合は、住んできた愛着もありますし、本当に欲しいと思う人に住んでほしいと思っています。状況にもよりますが、価格よりも本当に欲しいと思ってもらえることのほうが比重が高くなることもあります。
「本当に欲しいが、どうしても予算が足りなくて何とか端数だけでも何とかなりませんか?」
「本当に欲しいが、どうしてもリフォームでこれくらいかかりそうなので、その分だけでも何とかなりませんか?」
といった本気度が最後の決め手になることは多々あります。あまり欲しい気持ちを前面に出し過ぎると足下を見られそうと感じるかもしれませんが、実際の現場ではむしろ逆の方がいい場合が多いです。本当に欲しいのであれば、その気持ちを包み隠さずそのままの気持ちを伝えるようにしましょう。
中古マンションの値引き交渉で失敗しないために
値引き交渉で一番怖い失敗としては、値段交渉をしている間に他の人に取られてしまうことです。
例えば、買付申込書を提出して値段交渉するのと同時並行で住宅ローンの事前審査をするケース。事前審査が通らないと値段交渉に応じない売主も多く、事前審査を通しているうちに、購入希望額より高く事前審査が通っている2番手が現れ、そのまま取られてしまうケースがあります。
また売主によっては、一旦は価格交渉が成立して、あとは契約するだけの状態であるにも関わらず、他で満額での購入申込が入り、そのまま契約を進めてしまう人もいます。
中古マンションの値引き交渉で気を付けることは、値段交渉をしている場合、契約をするまでは安心は出来ないことを理解しておかなければいけません。また、これらのケースは全てにあてはまるわけではなく、売主や売主側の業者の方針によって変わるので、その都度注意しなければいけません。
価格交渉をする上で大事なのは、交渉する価格とは別に、最大限承諾できる価格のデッドラインを作っておくことです。例えば、「買えなくなるようであれば満額でも構わない」といったことです。またこのデッドラインは交渉にあたる不動産仲介業者と共有し、状況次第で他の人に取られないように進めていくことも、大変重要です。
価格交渉に関する知識【番外編】
その他、私が営業の現場でよく受ける質問などを以下にまとめておきます。
現金一括の方が価格交渉に有利か?
実際に現金一括で購入される方は、ほとんどこの考えをお持ちです。確かに住宅ローンを利用する方と違い、契約をすればまず流れる可能性が低いのでその点ではプラスになります。
しかし、現金一括であれ住宅ローンを利用するのであれ、売主からしてみれば受け取るお金は変わりません。一般的には現金一括だからと言って、その事が直接的に価格交渉に影響することは少ないです。
相場より高ければ値引きしてもらえる?
今はネットを使って相場を把握することもできるようになってきました。売りだし物件は基本的に相場価格で売り出されているものが多いですが、中には高いもの存在します。
そういう物件は相場価格を理由に値引きできるかというと、そうではないことも多いです。相場価格よりも高く出すにはそれなりの理由があることが多いです。
例えば住宅ローンの残債が残っているとか、相場が上がると思っているというケースなどです。特に人気エリアなどはその傾向が高いです。相場価格は高い安いを判断する材料にはなりますが、それが価格交渉になるわけではないので注意しましょう。
表面的な価格にこだわり過ぎて損をすることがある
どうしても取引価格は目に見えやすく、こだわりを持ってしまうところです。しかし、今は中古マンションを購入するにしても、「住まいの給付金」「住宅ローン控除」「リフォーム関係の補助金」など、多くの補助的な制度があります。
あまりに表面的な価格にこだわり過ぎて、こういった補助金や減税制度を忘れてしまっては元も子もありません。引渡しを受けてからでは気付いても後の祭りで、引渡し前の入念な準備が必要である場合がほとんどです。
これらの制度は条件にもよりますが、数百万円規模にもなることもあるので、頑張って80万円引いてもらったものの、補助金関係を忘れていてその分で300万円損をしたということもあり得るわけです。
この辺りについては、営業マンの力量によるところなので、中古マンションの取り扱いはもちろん、補助金関係のやり取りになれた不動産仲介業者や担当者を選ぶことが大切になります。
補助金や税制制度の概要や注意点については、「中古住宅購入時に利用できる補助金・助成金・減税の一覧」も合わせて参照ください。
不動産仲介業者の探し方については、「【住宅購入】不動産会社はどこがいいか?選び方と注意点を教えます!」も合わせてご参照ください。
目に見える金額だけでなく、見えない金額にも気をつける
いかがでしたでしょうか。価格交渉にはまず相手を見極めて、その上で気を付けるべきポイントを抑えて価格交渉をしていくことが大切であることをご理解いただけたと思います。
しかし、交渉にこだわり過ぎて欲しい物件が他の人に取られてしまったり、目に見えない金額について注意が及ばず、結果損をしてしまったりすることがあることも注意しなければいけません。
大きな金額が動く取引で、一生に何度もあるわけではない取引ですから、その実行援助をする不動産仲介業者や担当者の果たす役割は大きいです。価格交渉にあたり状況を把握しながら、適切に最終目的を果たす能力であったり、補助金関係の手続きを円満に勧める知識と経験は、家探しにおいてとても重要な要素であることがお分かりいただけるかと思います。
価格交渉で得するのは数十万単位であったとしても、担当者選びで損することがあるのは数百万円単位に及びこともありますので、このことも価格交渉のポイントと合わせて知っておいていただければと思います。
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