新築住宅の供給量が年々減ってきており、住宅市場では、中古住宅の存在感が増してきています。
ここ最近では、良質な中古物件も増えてきており、新築よりも安く立地も良いものも多いため、購入の選択肢にいれることでお気に入りの物件に出会える可能性がグッと高くなります。
しかし新築とは違い、中古住宅には気を付けるべき点も多く存在します。とりわけ中古戸建てにおいては、中古マンションとは違い個別性が非常に強く、何となく尻込みしてしまう方も多いのではないでしょうか。
ここでは中古戸建ての購入で失敗をせずに、あなたが望む豊かな暮らしを実現するために知っておいて欲しい7つのポイントについてまとめました。
無理なく支払っていける予算の設定
当たり前ですが、飛ばしてしまっている方も多いのではないでしょうか。
一番はじめに考えていただきたいのは、中古戸建てを購入するうえで、無理なく支払っていける予算についてです。
なぜそんな当たり前のことを言うかというと、当たり前なのに出来ていない方が多いからです。
(出典:国土交通省 平成29年度住宅市場動向調査報告書より抜粋)
こちらのグラフをみてください。このグラフは実際に住宅を購入した方(購入後1年以内)に国土交通省がアンケートを送って集計した結果です。
その中に「住宅ローンの負担感」というものがあります。
新築・注文、マンションなど様々な物件種別がありますが、今回は中古戸建てに着目してみます。
この項目で、非常に負担感があるというのは「生活必需品を切りつめるほど苦しい」と説明されています。
少し負担感があるというのは「ぜいたくはできないが、何とかやっていける」という内容です。
この2つの項目で時期によって若干変動しますが、おおよそ5~6割くらいの方は、どちらかにあてはまっているのです。
こうならないための唯一の方法は、ライフプランニングと呼ばれる、将来にわたる家計の収支のシミュレーションをすることです。
私自身、10年以上にわたり、不動産とお金のプロとしてたくさんの顧客の住宅購入のお手伝いをしてきましたが、予算の正しい設定はライフプランニングしかありません。
アメリカでは、医者と弁護士に並んで友達にいてほしい職種のトップ3にFP(ファイナンシャルプランナー)が選ばれていますが、日本ではお金の教育があまりされていないこともあり、FPを利用する人はさほど多くはありません。
しかし、中古戸建てを購入するときのお金の失敗は、金額も大きいだけに取り返しがつきません。後から後悔しないために、手間とお金をかけてでもやるべきです。
エリアの絞り方
予算が分かれば、次はエリアを絞り込んでいきます。
予算の設定をしっかり行っていれば、予算がぼんやりしている時よりも探しやすいと思いますが、エリアを絞り込むときにぜひ知っておいて欲しいポイントをお伝えします。
①資産性
今後の日本の社会において、中古戸建てに限らず、不動産を購入するときに一番気を付けたいのがこの「資産価値」です。
不動産であれば何でも「資産」となる時代はすでに終わりました。
例えば、今は不動産市況は活況のように報道されていますが、実際のところ上がっているところと下がっているところがあります。
昔のバブル期は、すべての不動産が一律で上昇していたのと比べると対照的です。
不動産はこれから価値が残るものとそうでないものに分かれていきますが、すでにその選別は始まっています。
将来売りたいと思った時に、それなりの値段で売れてくれるのか。
それとも、売りたくても売れず、税金だけを支払い続ける「負」動産になるのか。
将来どういったエリアや立地であれば、資産価値としては良いのかを真剣に考えなければいけません。
②地盤・災害リスク
中古戸建てはマンションとは違い、地盤の影響を大きく受けます。
土地の低いところであれば水害のリスクがありますし、軟弱地盤であれば地震の時の揺れが大きくなったり、液状化と呼ばれる地層にある水が表層に出てきて、水のように波を打つ現象の被害を受ける可能性が高くなります。
時と場合によっては人命にかかわることです。住宅購入は最大の防災対策でもあるので、あえてリスクが高いエリアや立地の選ぶにはあまり合理的ではありません。
もちろん実家が近いとか、ずっと育った場所だからとか、致し方のない理由もあるかと思いますが、可能であれば災害リスクの低いエリアを探してみましょう。
災害リスクについては、どこの自治体でもハザードマップと呼ばれる資料がネット上や市役所で閲覧できるようになっているため、ぜひエリアを探すときの参考にしてください。
③立地適正化計画
少子高齢化社会は様々な分野で多大な影響を及ぼしますが、不動産市場においても多大な影響を与えます。
すでに日本の人口は減り始めていて、自治体によっては増加しているところとそうでないところがありますが、基本的には減っていきます。
人口が減れば自治体の税収は減るので、公共サービスにかけられる予算はどんどん目減りしていきます。しかしバブルのころに大量に作られた道路や水道管などは、これから更新の時期を迎えていきます。
そんな状況の中、今のようにポツポツと家が建っていると、公共サービスの効率が落ち費用もかかります。こういった現状と先行きから、政府は2014年に都市再生特別措置法を施行し、立地適正化計画の実施を全国の自治体に呼び掛けました。
立地適正化計画とは、現在の市街化区域(おおむね住宅化を図る地域とされている)の中で、コンパクトシティの考え方をもとに、居住誘導区域と都市機能誘導区と以外の区域に線引きをするものです。
ある程度線引きをして、住宅なり商業施設を一定のエリア内に集中させることで、公共サービスの効率化を図ろうとするものです。
居住誘導区域・都市機能誘導区域のどちらかに収まっていればよいのですが、それ以外の区域は将来的に公共サービスが行き届かなくなる可能性があるのです。
「そんなの田舎の話じゃないの?」とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、日本の7大都市(東京・大阪・名古屋・横浜・広島・福岡・仙台・札幌)においても、立地適正化計画に取り組んでいないのは東京のみです。
私の会社のある名古屋市もすでに立地適正化計画は公表されていて、周辺都市から人口を吸収している大都市ですら、すでにどこにも当てはまらない区域はあります。
実際には、どこにも当てはまらない区域でも、住宅やマンションはたくさん建っていますし、新築戸建てもたくさん建っています。
将来にわたって公共サービスが提供されるところとそうでないところ。あなたはどちらの不動産を買いたいですか?
このことは、不動産業界にとっては物件が売れなくなる都合の悪いことなので、親切丁寧に教えてくれるところは少ないと思いますが、あなたの資産に直結する重要なことですので、ぜひ覚えておいてください。
逆に居住誘導区域などは、密度が適切に保たれるエリアになるので、資産価値としてはプラスになります。
立地適正化計画は各自治体のホームページから誰でも閲覧できるようになっていますので、エリアを探すときには必ずチェックするようにしましょう。
中古戸建ては建物と土地を分けて考える
実際に中古戸建てを探していくにあたって、プロが使う探し方を教えます。
それは「土地と建物を分けて考える」ことです。
※ここでの計算の仕方はあくまで机上の簡易的な計算方法です。最終的には現地をみて状態を確かめて高い安いを見極めます。
分かりやすいように例を挙げて考えてみます。
モデルケース
住所:愛知県名古屋市東区筒井3丁目
土地面積:100㎡(30.25坪)
建物構造:木造
建築年:築10年
建物面積:100㎡(30.25坪)
土地の計算方法
まずは土地価格は、公示価格を利用します。
公示価格とは?
公示価格とは、地価公示法にもとづいて土地鑑定委員会が公表する土地の価格のことです。全国の都市計画区域内に設定された標準地について、毎年1月1日時点のその正常価格を複数の不動産鑑定士が鑑定し、土地鑑定委員会で審査して決定した価格です。毎年3月に公表されています。
ちなみに私はこちらのサイトをよく利用します。⇒ 土地代データ
このサイトをチェックすると、名古屋市東区筒井3丁目の公示価格が約100万円であることがわかります。
※土地はその形状や間口、向きによって価格は変動するのであくまで目安として考えて下さい。
※不動産会社では実際の取引事例なども、より詳しいデータが見られるようになっています。
土地面積は30.25坪なので、単純に土地価格だけでおよそ3,000万円と推測できます。
建物の計算方法
つぎに建物の価格の求め方ですが、物件種別ごとの平均的な㎡単価と、築年数を合わせて計算していきます。
構造 | 耐用年数 | 平均坪単価 |
木造 | 22年 | 55万円/坪 |
軽量鉄骨造 | 19年 | 60万円/坪 |
鉄骨造 | 34年 | 65万円/坪 |
RC造 | 47年 | 80万円/坪 |
平均坪単価は地域ごとによって前後します。またハウスメーカーによっても変動しますが、目安としてお使いください。
ここの耐用年数とは、税務上の耐用年数で実際の耐用年数とは違いますが、中古戸建ての売却価格は税務上の耐用年数が使われます。
つまり、実際にはメンテナンスが適切にされていて、まだまだ利用できる中古戸建ても、他の物件と一色単に計算されていることもあり、掘り出し物が見つかりやすいのが中古戸建てです。
モデルケースでは木造で築10年、30.25坪なので、
30.25坪×55万円×(22年ー10年)/ 22年=907.5万円と計算されます。
先ほどの土地価格と合わせて考えると、約2,900万円が目安になります。
この価格と比べて安いか高いかを見極めていくと、物件によっては掘り出し物が見つかる可能性もあります。
物件によっては、建物は状態も良く、まだまだ使えるのに、ほぼ土地価格で売りに出ていることもあります。
毎回ここまでしっかり計算しなくても、ある程度このような計算方法を知っておくことで、無駄に高い中古戸建てを購入するリスクを回避することが出来ます。
建物の耐震性を見極めるポイント
不動産情報サイトなどで、中古戸建てを探すとき、色んな情報を見ていきますが、建築年による耐震性の見分け方をお伝えします。
耐震基準と聞いて、多くの方は1981年6月の建築基準法改正を考えるかもしれません。
もちろん知らなくても大丈夫です。ここで覚えてください。
1981年6月以降に建築された物件のことを「新耐震基準」とよび、それより以前の物件を「旧耐震基準」とよんで区別しています。
しかし木造の戸建ての場合、2000年6月の建築基準法改正の際に、耐震基準が厳しくなっています。
つまり現行の耐震基準とよばれる建物は2000年6月以降の物件で、1979年6月以降で2000年6月以前の中古戸建てで耐震診断をすると、現行の耐震基準を満たさないと判定されることも多々あります。
特に地盤が固くないエリアについては、建物の耐震基準については特に注意するようにしてください。
ココに注意
2000年6月とは建築確認が下りた時になるので、完成年月は2000年10月以降と考えた方が良いでしょう。
リフォーム・リノベーションをするのであれば、エコ性能も向上させよう
また中古戸建てにおいて、耐震性能とならんで気を付けたいのが、エコ性能です。昔の建物であれば、断熱材が入っていなかったり劣化していたりします。
もしリフォームや大掛かりなリノベーションを施すのであれば、ぜひ合わせてエコ性能向上も検討してみてください。実際に住んだ時の快適性や、電気代が全然違います。
またエコ性能を向上させるリフォームでは、補助金なども用意されていたりするので、ぜひ活用してみてください。
インスペクションを使いこなせ
インスペクションとは、建物状況調査のことで、建築士の資格者で国土交通省の研修を受けたインスペクターとよばれる専門家が、専門の機械を使用しながら、床下や天井などを、目に見えにくいところまで建物をチェックし、問題がないかを見極めていく調査のことです。
中古戸建てでは、特に個別性が強いため、築10年程度であったとしてもインスペクションを行うことをお勧めします。
インスペクションでは建物の傾きや、断熱材の劣化、所有者が気づいていなかった雨漏りやシロアリ、水道配管などをチェックしていくので、後から想定していた以上のリフォーム費用がかかったり、揉めたりすることが少なくなります。
また本当に買ってはいけない建物が分かるため、費用はかかりますが、買い物の大きさを考えればぜひ利用を検討しましょう。
中古戸建てこそ、担当者の経験やスキルが必要に
ここまで中古戸建てを探すときに気を付けたいポイントを説明してきましたが、最後のポイントは、不動産会社の担当者についてです。
中古戸建ては、住宅系の物件の中で一番難易度の高い物件種別になります。ですから、中古戸建ての取り扱いになれた担当者と一緒に探すことが欠かせません。
しかし、コンビニより多いと言われる不動産業者ですが、すべての人が中古戸建ての取り扱いになれているわけではありません。ここでご紹介したポイント以外にも気を付けるべきポイントは多くあります。
ですから、あなたが望む、住宅購入で暮らしを豊かにするためにも、中古戸建ての取り扱いになれた不動産業者、担当者をぜひとも選ぶようにしてください。
不動産業者の選び方については、関連記事「【住宅購入】不動産会社はどこがいいか?選び方と注意点を教えます!」も合わせて参照ください。
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