中古住宅(中古戸建て)は、もともとの所有者の管理具合によって物件の状況がまちまちです。これを個別性といいますが、マンションと違い中古住宅は、個別性が強いため、築年数が浅い物件でもトラブルが発生したりします。
そこでこの記事では、中古住宅を購入した後にトラブルで頭を悩ませなくてもいいように、トラブル回避のポイントについてお伝えします。
中古住宅・中古戸建てでよくある購入後のトラブル
中古住宅を購入する際は内覧をすることが一般的です。ただ内覧とはいっても、実際に物件を見る時間はどれくらいでしょうか。
物件を見るのはせいぜい1時間程度ではないでしょうか。あとは契約条件のことや価格交渉などで時間を取られてしまいます。
内覧で物件の雰囲気はわかってもトラブルや欠陥を見抜くことは至難の業です。ここでは中古住宅の購入後によくあるトラブルを列挙しました。内覧時にすべてを見えなくても頭の隅に置いておきましょう。
関連記事「名古屋で中古マンション・中古戸建てを見学・内覧するときの注意点まとめ」
給排水管の不具合
中古住宅を購入後に水道から水が出ない、水道管からの水漏れがある、下水管が詰まっているなどの水回りのトラブルがよく発生します。
特にしばらく使用していない中古住宅では可能性が高まります。これは上下水道の契約を止めているとよく起こります。内覧の段階できちんと水が流れるか確認できればよいのですが、水道を止めていると確認できない場合もあるので注意が必要です。
雨漏り
居室部分で壁にシミがあれば雨漏りがある、もしくは以前発生したと予測することができます。ただ、天井裏をのぞかなければわからない雨漏りもあります。
そして厄介なのは、雨漏りの原因は特定しにくいということです。シミがある場所とは別の場所から水が入り込んでいる場合もあります。目視でもよいので内覧の段階でみずから調査するか、不動産業者に後述するインスペクションを依頼しましょう。
シロアリによる被害
シロアリは厄介なトラブルのひとつです。シロアリを知識や経験のない人が探し出すことは困難といってよいでしょう。床下にもぐって根太を確認してもシロアリ被害を確認することは困難です。
ところがシロアリは家を倒壊させる可能性すらあるリスクです。最悪、シロアリの被害の程度がひどい場合だと、その中古住宅の購入をあきらめるほどになります。
契約のときに売主から「物件状況報告書」という書面が発行されます。この書類では、物件の状況について売主でしか知り得ないことを記載していくのですが、シロアリ被害が「なし」となっていても、売主が気が付いていない場合もあります。
その他付帯設備の不具合
付帯設備とは、給湯器や床暖房、食洗器など、中古住宅に付随している設備のことです。
付帯設備についても動くと思っていたものが壊れていたり、すぐに故障したりして交換などに良きせぬ費用が発生することもあります。
こちらも契約時に「付帯設備表」をもって、設備の内容や故障の有無を確認していきます。契約書や重要事項説明書の内容に気が取られがちですが、漏れがないようにしっかり読むようにしましょう。
想定よりリフォーム費用がかかってしまった
中古住宅をリフォーム前提で購入し、自分好みの家に作り変えるスタイルも増えています。一般的には事前にリフォーム業者を伴って見積もりを出してもらうので予想外の出費は少ないはずです。
ところが購入後に壁をはがしたら内部が傷んでいた、柱があるべきところになかったといった予期せぬ事態が発生することもあります。こうなると見積もり額以上の費用がかかることもあります。
安い見積もりを提示して仕事を取り、追加工事で価格を吊り上げる悪質な業者も中にはいます。このような悪質な業者は論外としても、リフォーム代が予想外にかかってしまうことも考えられます。
住宅ローン控除が使えない
中古住宅を購入する際、多くの人が住宅ローンを利用します。このため、住宅ローン控除もよくつかわれる制度です。
そしてこの住宅ローン控除が使えると思ってローンを組んだのに、住宅ローン控除が利用できない場合もあります。
中古住宅で住宅ローン控除を利用する場合、木造・軽量鉄骨造であれば建築後20年以内、それ以外の非木造系であれば建築後25年以内であれば問題なく利用できます。
しかしこの建築年の要件を超える場合、耐震基準を証明する書類がないと控除が適用されません。昭和56年6月以前の物件では耐震診断結果、耐震補強の証明等の書類が必要となります。
中古住宅・中古戸建てを購入した後のトラブル回避のためのポイント
ここまで、中古住宅・中古戸建てを購入した後によくあるトラブルについて説明をしてきました。
ここからは、中古住宅・中古戸建てを購入する上で、どうやったらトラブルを回避することができるかを説明していきます。
インスペクションをする
インスペクションとは、建物診断のことです。一級建築士などの専門家が建物基礎の不具合、外壁のひび割れ等のチェックをしてくれます。
費用は数万円から十数万円程度が一般的です。インスペクションを行う専門家は不動産業者とは別会社の人なので中立性も確保されています。
インスペクションによって、内覧の時になかなか確認することができない「建物の傾き」「屋根裏のチェック」「床下のチェック」などをします。
これによって、かなり高い精度で中古住宅の不具合を発見することができます。またインスペクションによってリフォームの必要箇所もある程度はっきりするため、後から余分な費用がかかってしまうことも減らせます。
インスペクションについては2018年の宅建業法の改正によってインスペクションに関する記載や取り扱いが明記されました。このように活用が期待されるインスペクションですが、注意点もあります。
それは専門家による診断とはいえ、壁や床をはがしてその内部まで調査するものではないことです。主に目視が主で使用しても超音波やレーザー測量機器くらいになります。ただしインスペクションの特性を理解したうえならば、十分に活用することが可能です。
瑕疵担保責任の範囲や期間をあいまいにしない
不動産売買契約において土地や建物のトラブルに対応する条項として瑕疵担保責任の条項があります。これは売主が瑕疵(かし)、つまり外部からは容易に知ることができない欠陥について責任を負うという条項です。
買主は契約解除や修補請求ができます。この責任の期間は、民法上はその欠陥を知った日から1年以内の請求が可能です。しかし実務では引き渡しから3カ月程度とされることがほとんどです。
また瑕疵の対象は建物の主要部分(構造躯体の主要な部分、雨漏り、シロアリ、給排水管の故障)に限定され、付帯設備はその対象となりません。
ただ初期不良のみ補修請求ができるように、引渡し時から1週間のみ保証期間をつけるなど、売主買主の双方の合意によって特約を付保することもできます。
あとからトラブルを防ぐためにも、なあなあにせずに、しっかり取り決めを行うようにしてください。
さらに詳しく
不動産会社が売主になる場合は、宅建業法によって2年以上の瑕疵担保責任期間が課されます。しかし、付帯設備はその場合においても対象にはなりません。付帯設備の耐用年数を考慮しながらリフォーム費用を算出するようにしてください。
余裕があれば既存住宅瑕疵保険の加入も検討
引き渡した後に、建物に瑕疵(目に見えない)が見つかった場合、売主は予期せぬ出費を強いられる場合があります。特に個人間取引の場合は、売主にそこまで大きな負担を強いるのでは酷であることから、個人間は合意の下で、瑕疵担保責任期間を無しとするようにすることも出来ます。
しかし購入する側としては、中古住宅で購入したあとの補償がないことに対する不安が、中古住宅の流通を阻害しているという向きもありました。
そこで新築住宅のみが対象となっていた、瑕疵保険を中古住宅にまで補償を広げた「既存住宅瑕疵保険」が誕生しました。
その内容は柱や梁などの構造主要な部分や窓や壁などの雨水の侵入を防止する部分に瑕疵が見つかった場合、その瑕疵担保責任に応じた保険金が支払われる仕組みになっています。
その他特約で付帯設備の補償をカバーすることも出来ます。ただし、おおむね中古住宅の躯体部分に関する瑕疵はカバーできますが、すべての瑕疵について対応しているわけではありません。
注意点としては加入にあたり保険会社の検査があります(通常のインスペクションでは加入できません)。この検査に合格するか、もしくは不適合とされた箇所を修繕することで加入することができるのですが、検査自体が厳しくなかなかすんなり合格する物件も少ないです。
そんな背景があることから、中古住宅ではあまり普及していません。売主とのやり取りの中で余裕があれば加入するようにしてください。
2020年からは売主の責任が増える
2020年には、民法の大改正が控えています。民法制定以来およそ120年ぶりの債権法の改正で多くの項目が改正予定です。不動産に関する部分も例外ではありません。
特に瑕疵担保責任は売主にとっては責任が拡大の方向で改正されます。瑕疵担保責任という語句は使われなくなり、代わりに契約不適合といった語句が使用されるようになるのです。
また、瑕疵があった場合にはこれまで法律上はできなかった代金減額請求などが可能になります。契約解除もこれまでは契約の目的が達成できない場合のみ認められるという条件は撤廃されるため、買主による解除の範囲が以前より拡大されました。
全体として今回の改正は、売主の責任が大きくなるような改正です。ただし、民法が改正されても契約書で異なる取り扱いがある場合はそちらが優先されます。このため契約書の内容にはこれまで同様注意が必要です。
ココがポイント
この民法改正により、より一層インスペクションの重要性が増すとともに普及が一気にすすむと思われます。
中古住宅・中古戸建ての取り扱い実績が豊富な担当者を選ぼう
中古住宅・中古戸建ては、個別性がマンションと比べても格段に高いために、物件種別の中でも取り扱い難易度はかなり高いです。
不動産の知識はもちろんのこと、建築や税務、国や自治体の制度に精通している必要があります。また不動産業者の担当者によって買い物の良し悪しがきまるという側面が強いため、不動産業者選びが何よりも重要です。
また不動産仲介業者と一言でいっても、売りが得意な業者と買いが得意な業者がいて、それぞれに求められるスキルや経験、知識は全く違います。
不動産業者選びについては、関連記事「不動産会社はどこがいいか?選び方と注意点を教えます!」を参照ください。
骨の折れる作業ではありますが、中古住宅を買うということは人生の中でも大きな買い物で、下手したらあなたの一生を左右する可能性すらある買い物です。失敗して後悔しないためにも、慎重に行動していきましょう。
まとめ
中古住宅・中古戸建てで、購入した後にトラブルに見舞われないためのポイントを以下にまとめます。
- 中古住宅を購入して起こるトラブルが色々ある
- インスペクションを活用する
- 契約内容や瑕疵の取り決めをあやふやにしない
- 余裕があれば既存住宅瑕疵保険に加入する
- 瑕疵担保責任の期間は売主が個人の時は、無しにもできる
- 不動産業者が売主のときは、2年以上と法律で決められている
- トラブルを避けて良いものにするには不動産業者選びが重要
ぜひこれらのことを念頭に失敗しない中古住宅購入をしていただき、豊かな暮らしを実現してください。
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