建築時の設計図などの図面関係が無いという物件は中古住宅ではよくあります。特に築年数がそれなりに経っている住宅なんかだと、図面自体が残っていることが珍しいことすらあります。
たまに図面が無い物件は買わない方がいいという意見も聞きますが、必ずしもダメだとは限りません。図面が無くても銀行融資が出なくなることもありませんし、決定的にダメな理由があるわけではありません。
しかし、無いことによって困るときというのはどんな時でしょうか?ここでは、そんな中古住宅で図面が無いと困ることについて説明していきます。
中古住宅の半分くらいが図面はない?
実際に取引をしている実感として、半分以上は図面が無いのではないでしょうか?
中古マンションでは管理組合で保管されていることが多く、実在することも多いですが、中古戸建てについては売主の方が残しているかどうかによります。時間がたてば捨ててしまったり、紛失してしまうリスクは中古戸建の方が高くなります。
しかし、そもそも図面が無くて困るのはリフォームやリノベーションをする時です。図面がない場合はもう一度寸法を測り直したり、図面を書き起こす手間が発生します。
その分費用が増えたりしますが、リフォームの場合は採寸して図面を起こすのにそこまで時間がかかるわけではないので、費用的には知れています。中には無料で対応してくれる業者もあるくらいです。
設計図面が無くて困ることは?
それでは、図面が無くて困るのは実際どんなことなのでしょうか?
壁をめくってみないと分からない
表面的なリフォームであればそれでよくても、間取りを変更したりするようなリノベーション工事を行う時は、図面の有無が影響してきます。通し柱の場所や筋交(すじかい)の場所は図面を見てみないと分からないからです。
そこで図面の無い住宅でリノベーションをする場合は、もともと抜こうと思っていた壁に筋交が入っていて抜くことが出来ないといった、解体してみないと分からないことが多く発生します。
フラット35を利用できない可能性がある
勤続年数や健康状態に問題があっても借りられる住宅ローンとして、多く利用されているフラット35。なぜ借りられるのかというと、銀行が「人」を見て貸すのに対して、フラット35は「物件」を見て貸すと言われているからです。
しかし逆を言えば、「人」に対しては若干甘いフラット35ですが、「物件」に対しては厳しいのです。フラット35を利用して住宅ローンを借りる時は、物件の検査が行われ、その検査に合格することが必須条件となってきます。しかし、この時に図面が無いと、全くダメという訳ではないですが、検査に合格するためのハードルは高くなります。
耐震診断を受けられない
木造であればそこまで問題になりませんが、鉄骨造やRCなど非木造系の建物の場合、耐震診断や耐震改修が困難になります。
耐震診断をするにはそれこそ車を買うのと同じくらいの費用がかかってしまうので、現実的ではありません。
図面の無い中古住宅はインスペクションは受けられるか?
2018年4月から法制度化されるインスペクション(住宅検査)については利用が出来るか疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。しかしインスペクションについては簡易的な図面があれば出来るので、特に問題になることはありません。
インスペクションで問題になるのは、図面の有無よりも、その建物の構造的に床下点検口などが無かったりする場合です。その場合、実際に床をめくらないといけないので、床下の状態が分からないということが起こります。
無いと困るのは「検査済証」
ここまで見てきたように、設計図面が無いと困ることは確かにありますが、人によっては特に影響してこないこともあります。図面が無いことが困るかどうかというのは、その時々の状況になるのではないかと思います。
しかし「検査済証」はそうはいきません。建築図面は建築士の力を借りて費用をかけるとこが出来れば復元は出来ます。しかし検査済証は発行されるタイミングが一度しかなく、再発行を受けることが出来ない書類なのです。
検査済証は何かというと、まず建築物を建てる時はこのような物件を建てますよと役所に申請するのが「建築確認申請」。そして役所がその計画に対してOKをだすのが「建築確認済証」。この建築確認が無いと基本建物は建築できません。
そして実際に建築が完成したタイミングで、最後に計画通りの建物が建ったかを検査をして発行されるのが「検査済証」。もちろん役所にも「検査済証を発効したこと」の控えは残していますが、ここ名古屋市であれば20年しか保管してありません。
しかも、この完了検査は法律上定められたものではなく、昔の物件で言えば取得率は20%と言われています。
計画通り建てるのは当たり前じゃないの?と思うこともあるかもしれませんが、昔はそうでもなかったのです(今でもですが)。筆者が経験したケースだと、建築確認申請に添付した図面とは明らかに違う内容の図面がもう一部出てきたことすらあります。(確信犯的な違法建築)
つまり検査済証が無い住宅と言うのは、そもそも役所に申請をして許可を得た通りの住宅を建築したという証明が無い、という状態になるのです。このきちんと建築されたかどうかの証明が出来ないことが、結構色々な場面で実は影響してくるのです。
検査済証が無くて困ることは?
検査済証が無くて、まず困るのは耐震関係です。例えば住宅ローン控除や登録免許税の減税などの適用を適用できる物件の条件は、木造なら20年以内、鉄骨やRC造であれば25年以内の建築物です。
この条件に当てはまらない物件は、新耐震基準に適合していることが証明されなければいけません。適合していることを証明する書類には「耐震基準適合証明書」か「既存住宅住宅瑕疵保険証」のどちらかの発行を受ければ良いことになっていますが、これらの発行を受けるために必ず必要になるのが、この「検査済証」なのです。
つまり、検査を受ければ高い確率で適合しそうな建物であっても、この検査済証が無いばかりに、住宅ローン控除をはじめとする税制優遇が利用できないということになります。
もちろん、方法がないわけではありません。耐震診断を受けて現行の耐震基準に適合されていることが証明されれば良いのですが、マンションの場合は、全体の耐震診断が必要になり費用も戸建と比べて多くかかるためハードルが高くなります。また戸建であっても、検査済証もなくてさらに図面もないとなると、耐震診断自体にかなりのお金と手間がかかるようになります。
他にも「住宅取得時の贈与税の非課税制度」を利用したい時は、住宅ローン控除が適用される物件と同じ条件が適用されるので、親からの贈与を自己資金に考えている方であれば注意が必要になります。
図面が無くて困るのは状況次第
いかがでしたでしょうか?
図面が無ければ絶対いけない、という訳では無いですが、あるに越したことはありません。しかし、多くの中古住宅が図面が残っていないことを考えると、ご自身の状況を考えながら判断していかなければいけません。
中古住宅の実績が豊富な業者や担当者であれば、このあたりのことは熟知していると思いますので、ご自身の状況を共有し、状況に見合った物件探しのお手伝いをしてもらうことが重要になります。
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