住宅ローン減税は数ある住宅購入にあたっての制度の中でも群を抜いて存在感のある制度です。そしてその対象は新築だけでなく、中古住宅でも利用できます。
しかし、中古戸建てで利用するためには様々な要件があります。また中古戸建ならではの注意点も数多く存在するため、ここでは中古戸建てという物件種別に的を絞って、住宅ローン減税を利用するときの注意点やポイントについてお伝えしたいと思います。
対象となる方は、中古戸建ての購入を検討されている方ですが、事前に知っておいた方が有利な点も多いため、少なくとも物件を探し始める前に読んでいただければと思います。
またこの記事を読むことによって、中古戸建てで住宅ローン減税を受けるために必要なことや、注意点の全体像が理解できるようになります。また中古戸建てで確実に住宅ローン減税を利用するためには、どんなことに気を付けたらいいかも分かるようになります。
LINE@に友だち登録をすると、クイズ形式で楽しく学べる「1カ月の集中学習プログラム」に無料参加ができます。
住宅ローン減税とは?
まず基本的なおさらいをしておきます。住宅ローン減税とはそもそもどんな制度なのでしょうか?
住宅ローン減税は、住宅ローンを借り入れて住宅を取得する際に、住宅購入者の負担を少しでも軽くすることを目的にできた制度です。
ポイントを簡潔にまとめると以下のようになります。
住宅ローン減税のポイント
- 毎年末時点での住宅ローンの残高の1%を10年間、所得税から控除(消費税増税時~2020年12月31日までは3年の延長有・消費税課税取引のみ)
- 所得税から控除しきれない分は、住民税からも一部控除
- 最大控除額は10年間で400万円(個人が売主となる非課税物件の場合は10年間で200万円)
- 住宅ローンの借り入れを行う個人単位で申請
住宅ローン減税で控除されるのは、所得税や住民税となりますので、収入や扶養家族の人数によって変わってくることになります。
また住宅ローンで借り入れる金額が大きければ大きいほど、戻ってくる金額も大きくなります(年間最大40万円、個人が売主となる非課税物件の場合は年間最大20万円)。
ですので、所得を抑えている自営業の方や、扶養家族の人数の多い方などは、理論上の控除額よりも少なくなることもあります。
購入者の借り入れ条件や年収などによって変わっては来るものの、多くの人は諸費用分くらいは戻ってくるイメージなのではないでしょうか?
弊社のお客様でも試算をしてみると、それくらいの金額が戻ってくる方が多いように感じます。
住宅ローン減税を受けるための共通の条件
それだけメリットのある住宅ローン減税ですが、すべてにおいて適用されるわけではなく、一定の条件を満たす必要があります。その条件とは以下のようになります。
住宅ローン減税の適用条件
- 自ら居住すること
- 床面積が50㎡以上であること(登記簿上の面積であることに注意!)
- 中古住宅の場合、耐震性を有していること
- 借入期間が10年以上
- 年収は3000万円以下(3000万円を超える年は利用できない)
- 増改築等の場合、工事費が100万円以上であること
このような条件があります。この中で特に気を付けたいのが「中古住宅の場合、耐震性を有していること」です。
住宅ローン減税を受けるための中古戸建て特有の条件
中古戸建ての場合、建築年によって耐震性を満たしているものとそうでないものが混在しています。
そこで、まず足切りとして建築年による一定の条件を満たす必要があります。
建築年による一定の条件
- 木造や軽量鉄骨造などは20年以内に建築された建物であること
- 鉄骨造や鉄筋コンクリート造などは25年以内に建築された建物であること
木造とコンクリート造の混合物件は低い方の年数が適用されます。
ちなみに20年以内、もしくは25年以内の場合とは、例えば木造の建築物で、引渡し日が建築年月日が引き渡し時においてどうかということになります。
例えば、引き渡された(移転登記が申請された)日が、19年11か月だった場合は、10年間の住宅ローン減税を受けることが出来ます。
逆に20年と1か月が経過していた場合は、住宅ローン減税を受けることが出来ません。たった2か月の違いで天国と地獄ほどの差があります。
ココがポイント
中古戸建てで住宅ローン減税を受けるためには?
しかしながら、建築年の条件に当てはまっていなければ全ての物件で住宅ローン減税を受けることが出来ないかといえば、そうではありません。方法はあります。
建築年の要件を満たさない場合、以下の書類があれば住宅ローン減税を受けることが出来るとされています。ここからはその3つの書類と内容、そしてそれぞれの注意点について説明していきます。
耐震基準適合証明書
国土交通書が定めた建築基準に適合することを建築士が証明した書類になります。
耐震基準に適合しているというと、建築基準法が大きく改正された1981年(昭和56年)6月以降の物件を思い出す方もいらっしゃいますが、そうでないことに注意してください。
これはプロである不動産仲介業者にも勘違いしている人がいるくらいです。
そもそも建築士は何をもって耐震基準に適合しているのかを証明するのかというと、「検査済証」という書類をもって確認をします。
「検査済証」とは、計画通りに物件が建築されたかどうかの適合性を証明する「唯一」の書類です。
私たちは誰であっても、建物をつくるときに、法令上の制限に適合しているかどうかを役所から確認を受け許可を受けなければ、建てることは出来ません。
そして、建物が完成した時に、計画通りに建築されたかどうかのチェックをして確認をうけたものが「検査済証」と呼ばれるものなのです。
つまり、この検査済証がなければ、計画通りに建築されて耐震性を満たしているかどうかが分からないのです。
厄介なことは、建物を建てるときの申請と許可は「必須」であるのに、この完了した時の検査は「任意」となっていて、物件によって有ったり無かったりするのです。
しかも再発行は出来ないので、紛失した場合も無いものとみなされます。
役所によって検査済証を発行したことの記録が残っていることもありますが、名古屋市では平成8年以降の記録しか残っていません。
この場合、何をすればよいかというと、耐震診断をして、現行の耐震基準に満たなければ耐震改修工事を行うという、余分な時間とお金が発生してしまいます。
既存住宅性能評価書
住宅性能評価という制度がありますが、これは2000年(平成12年)4月1日に施工された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」によって出来た比較的新しい制度になります。
この制度では、住宅の性能(構造体力、省エネルギー性、遮音性能等)に関する表示の適正化を図るため、共通のルールを設けて、消費者にとって性能が分かりやすいように表示をするという制度です。
法律によって認定された第三者機関が調査を行うもので、信頼性のある制度となっています。
そして、住宅ローン減税にもこの新築時のものか、既存の建物であっても調査を受けて評価証を発行されれば、適用されることになります。
ただし、この評価証の中で「耐震等級が1以上」と記載されている場合に限ります。
この「耐震等級1」とは、現行の耐震基準を満たしていることと同じ意味合いがあるので、先述の「耐震基準適合証明書」と同じような条件を満たす必要があります。
※耐震等級は1から3まであり、数字が増えるごとに耐震性能が増します。
既存住宅瑕疵保険
既存住宅瑕疵保険とは、売買のあとに、見えない欠陥が発見された場合、売主からではなく、保険から修繕などにかかる費用の補償を受けるという制度です。
個人間売買が中心となる、中古戸建ての取引において、瑕疵担保責任とよばれる保証期間は、長くて3か月と短く、不安を覚える方もいらっしゃるかもしれませんが、既存住宅瑕疵保険では、最長5年まで補償を受けるようにすることが出来るため、中古住宅の流通の促進に大きな期待が寄せられています。
ただし、保険に加入するにあたり検査が必要となり、その中のひとつに「現行の耐震基準を満たすこと」という要件があるので、これも同じように「耐震基準適合証明書」と同じような条件を満たす必要があります。
耐震改修工事をする
そのままの状態で現行の耐震基準を満たすことが証明できない場合は、「耐震診断」やその結果によっては「耐震改修工事」を行い、現行の耐震基準を満たすようにする必要があります。
自治体によっては、補助金制度を用意しているところも多いので、活用できるのであればぜひ活用の検討をしてください。
補助金制度にも色々と条件もありますので、役所に確認して進めていくようにしましょう。
またこの際に建築図面が残っているかどうかも、時間や費用面において大きく差が開きます。
場合によっては、住宅ローン減税を受けても、それ以上に費用がかかることもあり得るので、総合的に判断していくとよいと思います。
スケジュールに注意する
ここまで説明してきた、住宅ローン減税を受けるための必要な手続きですが、最も気を付けなければいけないのは、スケジュールです。
これらの書類を取引きが終わったあと(引き渡しを受けた後)に発行してもらっても、住宅ローン減税を受けることはできません。
実際の取引でも非常にトラブルが多く発生しているのは、ここです。
本当であれば住宅ローン減税を受けることが出来たのに、引渡し前に書類の発行をしていなかったがために、住宅ローン減税を受けることが出来ずに、数百万円の損をするということが、頻出しているのです。
ただし耐震改修工事などを行い、後から基準を満たすことで適用を受けるというイレギュラーな方法もありますが、いずれにせよ、先に申し出ておく必要がありますので、注意するようにしてください。
物件の構造による注意点
その他にも注意したいのは、物件ごとの構造です。
建築年の要件を満たさず、かつ検査済証が無ければ、「耐震診断」状況によっては「耐震改修工事」をして現行の耐震基準を満たすようにすればいいのですが、構造によっては出来ない(非常に困難)な構造もあります。
それは木造以外の「軽量鉄骨」「鉄骨造」「RC造」です。木造以外のこれらの構造には「構造計算」が必要になるので、耐震診断ができない、出来たとしても非常に高額(車1台くらい)かかります。
その他、1階がRC造の駐車場で、2階より上が木造となっているような混合構造物件も「耐震診断」ができないこともあり、注意が必要です。
気を付けたい中古戸建ての耐震性
住宅ローン減税の話とは少し外れますが、耐震性の部分で気を付けてほしいポイントがあります。
それは木造住宅の場合、建築基準法改正による耐震基準の変更が「2回」行われているということです。
1回目は1981年(昭和56年)6月、そして2回目は2000年(平成12年)6月です。
2回目の改正は1996年に発生した阪神淡路大震災で、1981年6月以降の耐震基準の建物も多く倒壊したため、さらに改良されたものです。
ですから、実際に2000年6月以前の建物に耐震診断をすると、「現行の耐震診断を満たしていない」と判定されることが良くあります。
費用は余分にかかってしまうかもしれませんが、家族の安全を考えるのであれば、慎重に判断していく必要性もあるのではないでしょうか。
中古戸建てを購入する際の注意点については、関連記事「中古戸建てを購入する時の注意点を徹底解説」も合わせて参照ください。
中古戸建てで住宅ローン減税を受けるために重要なポイント
これまで説明してきたように、中古戸建ては中古マンションにはない、独自の注意点が多く存在ます。住宅ローン減税に限らず、気を付けるべきポイントが多く存在するのです。
ここまで読んでくださっている方は、中古戸建てを真剣に検討されている方だと思いますが、中古戸建てで住宅ローン減税をはじめ、失敗しないための一番大きなポイントは、中古戸建ての取引になれた不動産仲介業者の存在です。
不動産取引の知識だけでなく、税制や建築など幅広い知識が求められ、かつ経験も要求されます。
ですから、中古戸建ての購入を検討している方や、選択肢に入れている方は、ぜひ中古戸建ての取り扱いになれた不動産仲介業者を選ぶようにしてください。
中古戸建ては個別性が非常に強いとされる物件種別で、市場は玉石混交です。直せばまだまだ利用できるような物件が土地価格だけで売りに出されていたりと、掘り出し物が多く眠っているのも中古戸建ての大きな特徴です。
ぜひ中古戸建てに強い不動産仲介業者をパートナーにして、いい買い物が出来るように準備してくだされば幸いです。