フラット35は国土交通省と財務省が共同で運営をしている「住宅支援機構」が取り扱っている商品です。住宅支援機構が直接融資を行うのではなく、銀行やノンバンク系の金融機関などが代理店となり、融資の受付をしています。
この低金利の時代において、フラット35は長期間(全期間)金利が固定されることから、金利の上昇局面では非常に魅力的かつ合理的な商品にも映ります。
ここでは、そのフラット35の魅力と、良く質問を受ける旧耐震の中古マンションでの取り扱いについて説明していきます。これから中古マンションの購入を検討している方で、特に旧耐震の物件も検討にしている方はお役に立てていただけると思います。
フラット35の進化を振り返る
フラット35というと、何となくですが銀行で借りれない人が借りるローンというような目で見られることもありました。しかし、低金利時代において長期間固定金利で借りられるという合理性と、常に改良され使いやすくなってきており、銀行が扱う住宅ローンと比べても遜色がないくらい、使い勝手のよいローンに変わってきました。
まずは直近の改正内容を簡単に振り返っていきます。
2017年10月
この時から、団体信用生命保険の保険料が金利に含まれるようになりました。以前のフラット35は、団体信用生命保険に加入する時は、毎年保険料を住宅ローンとは別で支払う必要がありました。
フラット35の見た目の金利は他の銀行の全期間固定の商品と比較して安く見えていても、団信保険料を含めると実質金利は高くなっていました。また、毎年保険料を支払うので、支払いを失念してしまい保険が失効してしまう人も出ていたことが問題になっていました。
しかし保険料が金利に含まれたことで、見た目の金利はもちろん高くなりましたが、実質金利は安くなりました。もちろん団信の加入は必須ではないため、健康に不安がある方でも住宅ローンを借りられるという、従来のメリットはそのままです。
また団信の内容も介護状態も対象になるようになり、より充実しました。
2018年4月
フラット35の融資対象はこれまで物件価格の9割まででした。金融機関によっては、残りの1割の部分も借りることは出来るのですが、その部分だけは金利が高くなってしまっていました。
しかし、この時の改正により、諸費用も含めて9割までと変更されたため、借り入れられる割合が実質的に増えたことになります。諸費用に含まれるのは、融資事務手数料・不動産仲介手数料・印紙代・登記費用・火災保険料などです。
中古マンションの場合だと、約97%くらいまでフラット35で借りられるようになります。この変更によって、より安い金利で多くの金額を借りられるようになりました。
またリフォーム資金も借りることが出来て、尚且つ金利引き下げが0.5%受けられるようになるという「フラット35リノベ」の適用条件が拡大されました。
細かい話なのですが、これまでの「フラット35リノベ」は適用条件が厳しすぎて全くといっていいほど使えませんでした。それが今回の変更でかなり使いやすくなることが予想されます。
2019年6月
フラット35の運営母体である住宅支援機構が保証型と呼ばれる仕組みを活用した、金融機関独自のフラット35が提供されるようになりました。
たとえば、物件価格と諸費用を合わせた総額の1割を自己資金と出せるのであれば金利優遇があり、さらに2割出せるのであればより金利優遇があるといったように、自己資金がある方に対して金利を優遇する商品が発売されました。
金融機関によって取り扱いの有無や、審査基準が変わってきます。昨今の低金利を考えれば、条件によっては10年固定なみの金利で全期間固定になるので、個人的にはかなり活用しています。
フラット35は属性要件が比較的緩い
そしてフラットの大きな特徴の一つが、通常の銀行と違い、物件の要件は比較的厳しいものの、人に関する属性要件は比較的緩いことです。例えば一般的な銀行の審査であれば、正社員で転職後間もないと借りにくいといった条件があったりしますが、フラット35にはありません。
正社員に限らず、派遣社員やパート・アルバイトでも、借りることが出来ますし、転職期間も問題になりません。極端な話ですが、年金ですら収入として見なすことが出来ます。非正規雇用であっても、安定した収入があれば住宅を購入することができるという可能性を拡げてくれる非常にありがたい制度なのです。
また自営業の方の事業借り入れも、通常であれば返済比率に組み込まれて審査が厳しくなるのですが、内容によっては返済比率に含まれないものもあり、通常の銀行より借りやすい傾向にあります。
この特徴があるからこそ、銀行が借りられない人が借りると言われてきた節があるのですが、今はその内容の良さから銀行で借りられる人でも借りています。
関連記事「【永久保存版】自営業者向け住宅ローン借り入れマニュアル」
フラット35は旧耐震の物件は使えない?
属性要件は比較的緩いと言われるフラット35ですが、物件については厳格な要件があります。銀行であれば、属性が良ければ貸すところでも、フラット35では物件の適用要件に合格していなければ、利用することは出来ないのです。
そこで中古マンションの、フラット35の適用要件をおさらいします。
基準項目 | 概要 |
接道 | 原則として一般の道に2m以上接すること |
住宅の規模 | 30㎡以上 |
住宅の規格 | 原則として2以上の居住室(家具等で仕切れる場合でも可)ならびに炊事室、便所及び浴室の設置 |
併用住宅の床面積 | 併用住宅の住宅部分の床面積は全体の2分の1以上 |
戸建型式等 | 木造の住宅は一戸建てまたは連続建てに限る |
住宅の構造 | 耐火構造、準耐火構造または耐久性基準に適合 |
住宅の耐震性 | 建築確認日が昭和56年6月1日以後であること (建築確認日が昭和56年5月31日以前の場合は、耐震評価基準などに適合) |
劣化状況 | 外壁、柱等に鉄筋の露出がないこと等 |
管理規約 | 管理規約が定められていること |
長期修繕計画 | 計画期間20年以上 |
この中で、住宅の耐震性を見てください。
「建築確認日が昭和56年6月1日以降」となっています。この建築確認日は、建築確認済証で確認をします。※確認済証が紛失しているマンションは、登記簿上の新築時期が、昭和58年4月1日以降となるので注意が必要です。
このことから、通説ではフラット35は旧耐震の物件は利用できないと言われています。ほとんどの不動産仲介業者はそう思っているんじゃないでしょうか?
しかしカッコ書きを見ていただくと、「建築確認日が昭和56年5月31日以前の場合は、耐震評価基準などに適合」と書かれています。この「耐震評価基準など」という文言がこの記事の核心の部分です。
フラット35で中古マンションの耐震評価基準の概要は以下のように定義されています。
(1) 構造形式がラーメン構造と壁式構造の混用となっていないこと。
(2) 平面形状が著しく不整形でないこと。
(3) セットバックが大きくないこと。
(4) ピロティ部分が偏在していないこと。
つまり、これらの要件を満たせば、物件によっては調査の結果、旧耐震のマンションでもフラット35の適合証明書が発行できるということになります。
そもそもの話になりますが・・・・
この記事を読んでテンションがあがった人もいるかもしれませんが、正直なところ当社としては安全性や資産価値の観点から、旧耐震の中古マンションについてお勧めしていません。
安全性はもとより、将来の資産価値にやや懸念を感じるからです。もちろん耐震改修工事がなされているなど、問題のすくないマンションも存在します。しかし基本スタンスとしてはおススメはしません。
ただ、よほど立地がいいことや、お勧めしない理由を理解した上であえて選ぶという方もいらっしゃると思います。
最終的には人それぞれの価値感によるところなので、もしフラット35の利用を予定されている方で、旧耐震の中古マンションを検討するのであれば、ぜひ参考にしていただければと思います。
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